地域社会教育
まちづくり
韓国

経済学部 地域経済学科

内田 和浩教授

Kazuhiro Uchida

地域に根差した行動的なフィールドワーカーThink globally,act locallyの実践

社会教育主事としての経歴を持ち、地域社会論と社会教育の両方の専門家として、本学で多くの授業数を抱える内田教授は、韓国でのフィールド調査も精力的にこなす研究者です。研究成果をもとに、北海道を地域づくりの実践に尽力しています。

地域社会論と社会教育の専門家として、
地域づくりを考える
内田教授は大学卒業後、「地域を創る大人の学び」を支援する自治体の社会教育主事として、相模原市の公民館に就職。そこでの地域社会教育実践を通じて学んだことが、理論的にどのような意味を持つのかを深く知りたいと考え、31歳のときに北海道大学大学院に進みました。そして、地域づくりの主体形成という視点で社会教育学を学び、地域社会論と社会教育はまさに表裏一体であると実感したといいます。

内田教授は、社会教育学の観点から、地域住民がどのようにして地域づくりの担い手となり、成長していくかということをメインにしながら、それによって地域社会がどのように変わっていくかを調査・研究しています。さらにその際に、市町村という自治体がどんな役割を果たすのかについてもあわせて研究しています。

北海道の地域づくり実践は、
行動する研究者のライフワーク
内田教授は、北海道の地域づくりを応援する気持ちを胸に、道内の自治体を数多く調査し、さまざまな地域づくりの実践研究を重ねてきました。同時に、比較研究の必要から、大阪府貝塚市、東京都国分寺市、長野県飯田市、愛知県豊田市と沖縄の伊江島などで調査を行い、そしていま、韓国が主な舞台になっています。内田教授にとって、比較研究と北海道での実践がライフワークとなっています。

縮小社会――これからは人口が減少し、特に地方は縮小していくことを前提に、いかにいまの生活を持続していくかという視点でまちづくり、地域づくりを考える必要があります。そのための拠点となるのが「公民館」です。公民館は、人が出会ってつながるための場であり、その人たちが継続的に関わることのできる活動を積み上げていくことで、公民館の機能も着実に発展していきます。内田教授は、北海道公民館協会理事として、公民館がきちんと機能しているかなどの相談に乗り、公民館を活用した地域づくりを地域住民と一緒に考え、自ら行動する研究者として積極的に活動しています。

大邱・寿城区上洞のマウルセンターにて

韓国のマウルづくりを
質的調査法で詳細に調査
韓国での調査研究は、大田市と札幌市を比較する「大都市における地域社会教育実践成立の可能性」から始まりました。内田教授は、大田大学校地域協力研究院客員教授として半年間韓国に滞在し、現地でさまざまな調査を行いました。内田教授の調査手法は、地域づくり団体リーダーへのインタビューやライフヒストリー調査で、広域自治体と基礎自治体の地域づくりに関する政策研究にも及んでいます。

韓国では地域づくり、まちづくりのことを「マウルづくり」といいます。日本の町内会・自治会のような地域住民自治組織は韓国にはなく、定住意識も低いため、まちづくりの核になるものがありません。そういう中から、公民館のような施設をつくるなど、さまざまな新しい取り組みが始まっています。また、地域の人が5人以上集まると協同組合をつくることができ、マウルづくりの担い手が数多く起業して、地域の中で新たな仕事がつくられています。これはいわば社会的企業ともいえ、この社会的経済活動はマウルづくりと一体となっている点が注目されます。日本でも町内会・自治会が機能していないところでは、韓国的なまちづくりの事例は大いに参考になるかもしれません。
  • 忠清南道・洪城郡オヌイ圏域での
    フィールドワーク

  • ソウル・城北区東仙洞でのフィールドワーク

大田で始まった研究は、
韓国内、北東アジアへと発展していく
現在、国から科学研究費として助成を受けている研究では、ソウル特別市と城北区、大邱広域市と寿城区、大田広城市と中区、忠清南道と洪城郡という4つの広域自治体と基礎自治体へと研究フィールドを広げています。これらの地域の特徴を整理し、それぞれの施策や条例、担当行政機関など「マウルづくり」政策の進展状況と、その比較のための調査を進めています。さらに、現在の日韓比較にプラスして、今後は中国の東北部や極東ロシアを含めた北東アジア地域にまでフィールドを広げ、日韓中露4カ国の比較を行いたいという目標を掲げています。

内田教授はそうした比較研究の結果を北海道の自治体に還元していくとともに、その担い手となる人材の育成にも注力しています。そしていま、これまでに自治体職員として地方に送り出した卒業生のネットワークづくりに取り組んでいます。内田教授は、「私と一緒に学んで、地域を活性化し、新しい北海道をつくる仲間になりませんか」と、学生たちに熱く語りかけています。

Profile

経済学部 地域経済学科
内田 和浩

1960年生まれ。中央大学文学部哲学科社会学専攻卒業。神奈川県相模原市教育委員会社会教育主事を歴任し、北海道大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(教育学・北海道大学)。北星学園女子短期大学助教授、北海道教育大学生涯学習教育研究センター教授を経て、2008年より現職。『「自治体社会教育」の創造(増補改訂版)』(北樹出版 2011年)、『持続可能な地域社会の発展と「まちづくり」の課題~韓国「大田型まちづくり」~』(北海学園大学経済学会 経済論集 2014年)など、著書・論文多数。

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